MR学会
こんにちは。
河野です。
先週に第45回日本磁気共鳴医学会大会、通称 MR学会 に参加させていただきました。
この学会はMRIに関する学会で、年に一度9月に開催されます。
今回は、栃木県の宇都宮での開催でした。
9.14木曜日に仕事終わりに名古屋まで行って、そのまま新幹線で東京まで行き、「なすの」という東北新幹線で宇都宮まで約4時間というとても長い道のりでした(+o+)
宇都宮の学会の会場に到着したのは5時過ぎで、一日目はそこから7時すぎまで講演を聴きました。
日本磁気共鳴医学会は、私の中ではとても変わった学会で、医師は勿論のこと、私たち診療放射線技師や物理学者、生物学者、工学者などのあらゆる専門家が一堂に会した学会です。
MRIは磁場や電波を使っているので、物理が関係してきますし、磁場や電波の生物学的影響、MRI装置を同じ状態で維持する工学などなど。
毎年春と秋に開催される放射線の学会の参加者は、大体放射線科医と診療放射線技師でほぼ100%占めていますが、本学会は先ほども記載しましたが、いろいろな分野の専門家の先生方がいらっしゃいます。医師でも主にMRIを診療に用いている科の医師が多く、放射線科医、脳神経外科医、整形外科医など他分野に渡ります。
学会の発表は私たち放射線技師の発表はなんとなくわかりますが、物理学者の発表のセッションの話にまったくついていけません。たとえば、最近流行りの「圧縮センシング;Compressed Sensing」という宇宙工学を基に、少ないデータから画像を再構築する技術で、その技術をMRIに応用したものです。この圧縮センシングを用いると、MRIの撮影時間を、画質を落とさずに20%ほど短縮できる画期的な技術です。
ただし、少ないデータから画像の復元をするので計算時間が数分から数十分と長く、それからしか撮影した画像を確認できないのが難点ですが、PCのハードウェアの向上により、数年後には普通の技術になっているのかもしれません。
今年はこの圧縮センシングがTopicsとしてありましたが、物理学者の専門的な数式を用いた発表は全くわかりません。。。そして発表もスライドも英語なので、ついていくのが精いっぱいで理解に苦しみます。。。(>_<)
でもとても身になる学術大会でした。今、ワシミ整形外科で取り組みを始めた、DWIBS(ドゥイブス)と言う全身のMRIによるがん検索の講演も聞けましたし、MRIの安全性の最新の知見も聴くことができました。
今大会で、一番ビックリしたことは、東北福祉大学の小川誠二特任教授がお越しになっていたことです。小川教授も物理学者です。詳細はWikipediaなどで調べてみてください。輝かしい経歴をお持ちです。
小川教授は、MRIでfunctional MRIと言う脳で酸素が使われている箇所(動態機能している箇所、賦活化といいます)を画像化する原理に関する論文を書かれました。
論文の引用数も2000回近くとかなり引用されている有名な論文です。
このfMRIによって、例えば、脳手術をする際に言葉を構築する脳の部位の近辺に腫瘍がある際には賦活化されている脳の箇所を触らないように手術ができます。つまり、手術中に脳の中で言葉を構築する大事な部分を切除したり、傷つけたりせずに済むようになり、fMRIで信号変化のある部分の機能を保存することが可能になりました。しかも、造影剤を用いませんし、MRIで検査を行うので被ばくもなく非侵襲的です。
私は学会会場で通り過ぎる小川教授を眺めるだけで、通り過ぎた後は写真を一緒に撮っていればと後悔しました。
なぜ、ここまで思い入れ?があるかと言いますと、大学病院時代にfMRIに携わって実際に患者さんの検査を行い、とても有意義な検査と実感していたからです。脳神経外科医からも信頼度の高い検査だからです。
そして何と言っても小川教授は毎年ノーベル賞の候補に挙がっている先生です。今年ももうそろそろ受賞者発表の時期ですが、ぜひ小川教授にノーベル賞を受賞していただきたいですね!
そうすればMRIの分野も注目されますから、ペースメーカーなどの金属の持ち込みに注意すれば、MRIはとても素晴らしい検査法だと思います。
ノーベル賞受賞となったらやっぱりあの時一緒に写真を撮っていればとより後悔するでしょうね。