MRIと酸素濃度 その1
コラムこんにちは。
河野です。
懐かしいニュースになりますが、今年の6月から7月にかけて、タイでサッカーチームの少年が洞窟に閉じ込められたと言うニュースがありました。その後、困難と言われていた潜水にて無事に全員帰還できたそうです。急いで救出した理由は、雨で洞窟内の水位が上がることや洞窟内の酸素が低下しているというこなどが挙げられたみたいです。通常の空気中の酸素濃度は20~21%ですが、今回の洞窟内の酸素濃度は約15%ほどだったそうです。
なぜ酸素濃度の話をしたかと言いますと、またまたMRIの話ですが、検査室内を常に酸素濃度計で監視しているからです。
CT室やレントゲン室には酸素濃度計はありませんが、なぜMRI検査室内に酸素濃度計?
その理由は、MRIの磁石に超伝導磁石を使用しているからです。
※永久磁石を使用したオープンタイプと言われている横が開いているMRI装置は関係ありません。今回はオープンタイプよりも磁場が強く画像が綺麗な超伝導磁石を用いたMRI装置のお話です。
まず、超伝導とはなんぞやという事ですが、難しいので飛ばしていただいても構いません。
簡単に説明します。コイル(針金をらせん状に巻いたもの)を液体ヘリウムによって‐269℃の絶対零度近くまで冷却することにより超伝導状態になり、中の電気抵抗が0になるので大電流を流すことが可能となるため強い磁場が作れます。
でも、「何らかの原因」で超電導状態が保てなくなった場合、大電流が急激に電気抵抗を受けてしまい、すべて熱に変換されてしまいます。この熱によって液体ヘリウムは気化してしまい、ヘリウムガスになります。気化したヘリウムガスは約700倍に膨張すると言われており、周りの酸素が急激に減ってしまいます。これをクエンチと言います。
万が一、検査中などにクエンチが起きてしまい(ほぼ100%近い確率でありませんが)、検査室内の酸素濃度が低下し、患者さんが酸欠にならないように速やかに検査室から移動させなければいけません。また、毎日のチェックで酸素濃度が低下することのないように監視をしています。
クエンチが起きてしまった際にはMRI室の排気管から大量の煙が出ます。火事による煙と間違えてしまわないように消防に連絡や周りに住宅に注意喚起が必要となり、ワシミ整形外科のMRI安全管理マニュアルにちゃんと記載しています。
動画がありましたので、「MRI クエンチ 動画」でぜひ検索してみて下さい。
ある動画には外に人が沢山いたり、動画を撮影している人がいるのは、計画クエンチと言って古くなった装置を入れ替える際などに人為的にクエンチをさせて磁場を落とします。これを消磁といいます。上記のように安全管理上、事前に消防にクエンチの旨を伝えます。
私は、以前大学病院で新規MRI装置の据え付けの際に少しだけヘリウムが漏れたのを見たことがあります。メーカー曰く、据え付けの際には漏れやすいそうです。私や先輩も初めてヘリウム漏れを見まして、本当に白煙が上がっていて撮影したのを覚えています。施設課の人達も初めて見たと言って驚いていました。
酸素濃度の人体の影響に関して一覧をお示しするつもりでしたが、辿り着けずに今回もこれにて終了です。